シェフからのご挨拶
Three Cultures. One Pizza.
皆さんこんにちは。シェルゾッドと申します。
私は1988年、キルギス共和国のウズベク人として、三代続くノン職人の家に生まれました。
ノンとは中央アジアで日常的に食べられている窯焼きパンです。
自宅の一角にある店舗は大きなタンディール窯があり、毎朝6時には焼きたてのノンを求めて近所の人々が訪れる、そんな環境で育ちました。
12歳になる頃には、学業の傍ら、父からノンの生地づくりを任されるようになり、
その日の気温や湿度を読み取りながら「生地の声を聞く」感覚を自然と身につけていきました。
この経験が、今の私の料理の基礎となっています。
その後、現在の妻・香織とキルギスで出会い、2010年に結婚し来日しました。
日本で暮らす中でノンが恋しくなり、庭に小さなタンディールを自作して焼いてみたところ、故郷の同胞に大変喜ばれたことがきっかけで、Silkroad Bakery SHER を開店しました。
通販を通じて全国へノンを届けるようになると、多くの方々に支持をいただき、私たち自身も中央アジアの味が日本でこれほど受け入れられたことに驚かされました。
やがてSilkroad Bakery SHER には、キルギス共和国・ウズベキスタン共和国・カザフスタン共和国・ロシア連邦の各大使館からもご注文をいただくようになり、
「同胞に懐かしい味を届ける」、「日本の皆さまに本場の味を知っていただく」
という使命感を胸に、夫婦で力を尽くしてきました。
その後に開店したレストラン VATANIM では、手延べ麺、米料理、煮込み料理など多彩な本場の料理を提供し、
『東京最高のレストラン2020』 に掲載されるなど高く評価されました。(※2021年に譲渡済み)
2021年からは新しい挑戦として、家族でカナダのモントリオールへ渡りました。
北米のパリとも呼ばれる街で4年間暮らし、フレンチとイタリアンの製菓・料理学校を卒業、さらにリッツ・カールトンでの研修を経て、友人と本格イタリアンピッツァ店を運営し、経験を積みました。
モントリオールでは豊富なチーズが日常に溶け込み、種類や扱いに関する知識が大きく広がりました。
また、毎日のように家族のためにサワードゥを焼き続けたことで、発酵の仕組みと生地の変化を深く理解するようになり、料理人として大きな転機となりました。
私の料理を支えるのは、三つの文化で培った技術と感性です。
中央アジアに根付く「窯」と「粉」の文化、
日本で磨いた職人としての丁寧さと繊細な技、
そしてモントリオールで深めたチーズへの理解、毎日サワードゥを焼き続けて培った発酵の経験、本格イタリアンピッツァの技術。
この三つが融合することで、NOSTRA PIZZAが生まれました。
私がこれまで歩んできた三つの文化圏での経験は、すべて現在のピッツァづくりにつながっています。
中央アジアの窯の温度、日本の職人としての姿勢、モントリオールで学んだ発酵とピッツァの技術。そのすべてを一枚に込めて焼いています。
皆さまにお会いできることを楽しみに、今日も生地と向き合っています。
1988年 キルギスにてノン屋の家に生まれる
2000年 12歳で学業の傍ら、ノンの生地作りを父親から任され始める
2010年 結婚、来日
2012年 MAYRAM オンラインショップオープン
2016年 2月 日本でもノンが食べたすぎて自宅に窯を手作りする
3月 中央アジアの同胞にノンを振る舞ったところ、多くの人から売って欲しいと言われ販売を考え始める
3月 キルギスの非加熱蜂蜜の輸入販売を開始
11月 ニキズキッチンにてキルギス・ウズベク料理の講師になる
2018年 MAYRAMにてノンの全国通販を開始
埼玉県春日部にSilkroad Bakery SHER実店舗を開店
2019年 高田馬場にウズベク・キルギス料理専門店VATANIMをオープン
2020年 VATANIMを中野に移転
2021年 カナダに拠点を移すため一旦Silkroad Bakery SHERを閉店、VATANIMを別のオーナーに譲渡。
2021〜2025年 カナダのフランス語圏のモントリオールで、製菓・料理の学校を卒業。リッツ・カールトンでの実習を経て、友人と本格的なイタリアンピッツァの店を営む。
2025年 日本へ帰国、NOSTRA PIZZA をオープン